NYを拠点にファッションの分野で活躍しているスタジオOBのフォトグラファーが、先日の来日の際に言っていました。「スタジオマンだけは、生まれ変わっても絶対にやりたくない。」
フォトグラファーになることを目指し、レンタルスタジオに勤めている方全員に強く想ってもらいたい考えです。スタジオマネージャーの僕が言うのも変な話に聞こえるかもしれませんが。
僕の若い頃に比べ、最近の人はマジメな人が増えました。だから、もっと遊ぶべきだとか、適当にやるべきと言うつもりはありませんが、マジメで一生懸命だけでは、上手くいかないということは心得ておくべきだと思うのです。
スタジオアシスタントという立場を頑張りつつも、「こんなこと、いつまでもやっていたくない。」という気持ちを忘れないことが大切だと言いたいのです。そして、そこから逃げるのではなく、体よくオイシイ仕事を探すのでもなく、正面突破で更なる上のステージを目指すべきなのです。
人がお金を出してでも欲しいと言ってくれるような写真をあなたに撮れる手ごたえがあるのならそれでよし。自分の写真がまだそのレベルに達していないと感じ、今の延長線上に人から求められる自分の写真が見えないのなら、あなたはフォトグラファーのアシスタントになるべく、それに必要なスキルを極め、自分の商品価値を高めればいいのです。
スタジオにお勤めの方なら聞いたことがあると思いますが、昔に比べ今はカメラマンを取り巻く環境が厳しい状況にあるのは確かです。だからこそ、それを言い訳にするような人に組することなく、もっと高いところを目指すべきだと思うのです。
必要なことはスタジオマン目線、スタジオマンの価値観における経験値ではなく、フォトグラファーとしてのものの見方であり、写真家としての価値観です。そのためには、今いる場所より高いところから見る意識を身につけていくべきなのです。
もう一度、言います。真面目で一生懸命だけでは、ただの便利屋として人の下働きに重宝がられるだけです。スタジオマンとして真面目に一生懸命やりながら、更なる上のステージで活躍できるように虎視眈々自らの商品価値を高めておくべきだと思うのです。
具体的にいえば、
スタジオ後、フォトグラファーデビューをするつもりなら、クライアントの立場にある方々に「いいね!」と言わせるクオリティの写真が撮れるようになっておくべきです。カメラマンアシスタントになるのなら、機材を選ばずテザーからレタッチまでを難なくこなし、社会常識的なコミュニケーションをスマートに行いつつ、求められるイメージのためにあらゆる準備、手配、仕切り、現場作業を師匠から任される人になるべきです。
あるスタジオOBは、スタジオマンの時にモード・ハイファッション雑誌を手掛けることで有名だった編集長に見初められ、新創刊する雑誌の専属フォトグラファーの地位を得た上でスタジオを辞め、その後フォトグラファーとして大活躍するようになりました。その反面、仕事のあてもないまま何となくスタジオを辞めていった方の多くが、カメラマンとして仕事をもらえるようになるまで非常に苦労しています。
また、別のOBは、スタジオ卒業を6か月後に控え、就く師匠に「〇〇くんがうちに来てくれるなら、半年でも待つよ。」と約束させていました。その後は師匠の期待通りアシスタントとして活躍、師匠から独立後は、多忙の日々を送る人気フォトグラファーとなりました。反面、師匠の都合で、「今すぐ来るなら採ってもいい」と言われ慌ててスタジオを辞めていった方の多くが、師匠に信頼されるようになるまでに苦労しています。
せっかく、大変な思いをして辛い仕事を頑張るんだから、カメラマン(フォトグラファー・写真家)として生計が立てられるようにならなきゃもったいないです。東京大学の受験に合格出来なかった人が「東大なんていく必要ない。」と言ったところで、世の中は負け惜しみとしか受け取ってくれません。
誰もが認めるカメラマンとなって、「スタジオマンだけは、生まれ変わっても絶対にやりたくない。」と言えるからこそカッコいいのです。
#カメラマン #仕事