【今日は田辺ではなく、あるスタッフの経験談です。】
3カ月の新人研修を明けてしばらく経ったころの話です。
当時はまだ、自分はセカンド(二人目)でスタジオに入っていましたが、先輩からは「気が利かない」とよく怒られていました。それでも、自分なりにはしっかり考えているつもりでしたし、頑張っているのだから問題ないと思っていました。
そして、入社から6か月目。厳しいことで知られるカメラマン某氏のロケは自分にとって過酷で衝撃的でした。
その日は、ロケの初っ端からカメラマン氏に怒鳴られっぱなしでした。その指摘のどれもがいちいち自分のダメさを言い当てているものですから、何も言い返せないまま「すみません。」と答えるのがやっとでした。
極め付けは、スタジオで先輩から怒られていたこととまったく同じ「気が利かない」ということをカメラマン氏からも叱られた時です。それまで、自分はそこそこ仕事が出来ると思っていたので、これには本当にショックを受けました
しかも、注意はその後も止まらず、礼儀や立場や考え方まで鋭く怒られました。あまりにも多くのことに怒られたので、しまいには混乱して何が何だかわからなくなってしまいました。
そうして、怒鳴られ続けたロケは終わり、カメラマン氏の事務所を出た後、自分は最寄りの駅に向かいました。その日は、スタジオのみんなとの食事会の予定があったため、自分はスタジオに戻らなくてはならなかったからです。
ただ、怒られ過ぎた頭はまだボーっとしています。27歳にもなって、こんなにも叱られるなんて思ってもいませんでした。
そのうち「自分はこの業界に向いていないんじゃないか」と本気で落ち込み、電車に乗る気にもなれないまま、しばらくホームのベンチでうなだれていました。
そして、これだけ頑張っているのに、これじゃあもう無理だなと考えていたとき、田辺からLINEがきました。
「今、どこにいるのー? なんで帰ってこないのー?」
今さら隠しても仕方ないので、自分は正直な気持ちを伝えました。
「もう、自分はダメです。帰れません。」
こちらがやっとの思いで絞り出した言葉に対し、田辺は嫌みなくらいにあっけらかんと返してきました。
「みんなで飲んでんだからさー、とりあえず帰っておいでよー!」
どうせ、自分のこの苦しさなんか、田辺にはわからないだろうと思い、
「自分はもういいです。放っておいてください。」
すると、田辺から帰ってきた言葉は、
「それは、それ! これは、これ! って切り替えられないでどうする⁉ この甘えん坊!!」
「せいぜい慰めてろ。」
これでハッとしました。
頑張っている自分がこんなに凹んでいるから可哀そうって、ただの構ってちゃん、ただのガキじゃんってことに気付きました。自分は何しにこのスタジオに来たんだよって思いました。
そこで、田辺にLINEを返します。
「今切り替わりました!遅れてすみません。向かいます!」
その時、自分に誓いました。もう悩むのはお終い。これからは怒られたこと、指摘されたことから逃げず、ちゃんと向き合うと。
今、思えば、自分が変わったのはこの時だったと思います。