(今回は、スタジオ周辺の地理をご存知の方向けの記事です)
僕のいるスタジオの前の区道は一方通行です。お車やタクシーのお客様は、撮影が終わると必ずその道から外苑東通りに出て帰られます。
ほとんどの方は、渋谷、青山、新宿、四谷方面へと向かわれるため、外苑東通りを右折します。要するに、左側通行なのでほとんどの方が反対方向の2車線を越え右に曲がっていくのです。
これは、かれこれ数年前のお話です。
ある日、スタジオのポストに1枚の紙が投函されていました。それは『外苑東通り中央分離帯設置のお知らせ』でした。
よく読むと、「歩行者による横断歩道以外の道路横断による事故を防ぐために中央分離帯を設置することになったので、○○年○○月より工事が始まります。」とのこと。「東京都建設局」と「国土交通省」と「四谷警察署」の連名通知でした。
中央分離帯ができると、スタジオに来られた方は外苑東通りを左折するしかありません。ほとんどの方が向かわれる、渋谷、青山、新宿、四谷方面へ行くには相当な遠回りとなってしまうのです。
スタジオにとって、これは一大事でした。港区を中心とするファッション業界関係の方からは「外苑スタジオはギリギリ北限」と言われていたのです。
それが、この中央分離帯によって、更に遠くなってしまっては、多くのお客様に見放されてしまいます。僕は、この工事を何とかすべく『お知らせ』に書かれていた「東京都建設局」の担当部署に電話しました。
僕:「区道から外苑東(通り)に入る車をすべて左折させるまでして、中央分離帯を設置するのはなぜ
ですか?」
ご担当の方:「これは私どもだけで決めたことではありません。国土交通省の方針で、通行する車両や横断歩道以外の道路横断をする歩行者の安全の観点から決定されたことなんです。」
僕:「じゃー、国土交通省に言えばいいってことですか?」
ご担当の方:「まぁ、そうですねー。私どもだけで決めたことではありませんので…」
そこで、国土交通省の担当部署に電話しました。
僕:「・・・中央分離帯の設置を決めたのはなぜですか?」
電話口の方:「個別案件につきましては、地域の警察署にお問合せください。」
そこで、僕は近所の四谷警察署に行き、担当窓口の方に尋ねました。
僕:「・・・中央分離帯の設置を決めたのはなぜですか?」
担当窓口の方:「それはうちに言われてもですね、都の建設局が様々調査して決めたことですから・・・」
たらい回しってこのことだと思いつつ、僕は一番最初に電話した東京都建設局の担当部署に再度電話しました。最初に対応して頂いた方の名前をメモしておいたのは良かったです。
僕:「・・・中央分離帯の設置を決めたのはなぜですか?」
ご担当の方(以下T):「それは、外苑スタジオさんの前の区道の交通量等も考慮した上でですね、やはり中央分離帯が必要だということになりまして・・・」
僕:「区道の交通量って調査とかしたんですか?」
T:「はい。○月○日に調査員が調査を行っております。○時から○時までに○○台の車が通行しました。」
僕:「ちょっと待ってください。○月○日って日曜日じゃないですか。この道は日曜と平日で交通量が全然違うのに、何であえて休日に調査するんですか?」
T:「そうですね・・・。」
僕:「それに横断歩道以外の道路を渡る歩行者の安全のためとありますけど、過去にこの付近でそれを原因とした交通事故はあったんですか?」
T:「いや、それは調べてないですね。」
僕:「実際に事故が起きたかどうかもわからないのに、平日の多くの車を遠回りさせてですね、今、世の中で問題となっているCO2の問題は考慮しなくていいんですか?」
T:「まぁ、田辺さんのおっしゃることもわかりますので、私のほうからも上の者にこういった意見があるということを伝えておきます。」
それから1~2カ月後のある日突然、僕宛てにその時の東京都建設局ご担当者さんから電話がきました。
T:「田辺さん、今、会議が終わりまして、取り急ぎ決定したことだけお伝えします。」
僕:「はい。」
T:「結論から申しますと、やはり中央分離帯の設置は安全上の観点からも中止にはできませんでした。」
僕:「そーですか。」
T:「ただ、田辺さんからご指摘頂いておりました区道と319号環状三号線(外苑東通りのこと)の合流箇所につきましては信号機を設置することで、右折を可能とすることとなりましたのでそのご報告です。」
こうして、その数か月後に、新しい信号機と横断歩道が外苑東通りに出来ました。「四谷三丁目北」信号がそれです。
我ながらこの結果にはビックリしました。と同時に、都の建設局の方の真摯なご対応に感謝しております。
みんな、それぞれの立場で、職務を忠実に果たしつつ、世の中がより良くなることを願っているんだとしみじみ思いました。日本って、いい国だなあと思うのです。