夢のある職業

 今から半世紀くらい前の話です。当時、写真家としてデビューしようとしていた方がいました。ただ、機材は何も持っていないし、それを買いそろえる程のお金もない。そこで、彼はなけなしのお金で中古のベンツを買いましたとさ。

 

 

 今となっては笑い話ですが、その後写真家として注目されたことを皮切りに多方面で活躍された方の実話です。「あの人はベンツに乗る程、売れている人」と周りに認知させることで、仕事(撮影依頼)をもらう。そんなことがまかり通る時代だったようです。

 

 ちなみにその方、カメラ機材も持っていないのに、仕事の依頼が来てどうしたか? これはその方のとなりに事務所を構えていた方から聞いた話ですが、仕事が入る度に機材一式借りにきたそうです。それだけでなくフィルムも。「何だ?この人」って怪訝に思っていたら、瞬く間に売れっ子になっていったのでビックリしたそうです。

 

 

 時代は変わって、現代。フォトグラファーのベンツ率は減りました。もちろん、外車といえばベンツという時代ではありません。でも、それ以上に「派手にブイブイ」やる時代ではなくなったことが大きいようです。

 

 

 ところで、若い方の間でどれだけ知名度のあるサイトかはわかりませんが、“フォトグラファー”でググると「スタンバイ」という求人サイトが出てきます。

https://jp.stanby.com/contents/detail/photographer

 

 で、そこに出ている“フォトグラファー”の書かれ方がビックリするほど夢が無さ過ぎます。「一人前になるまでは辛抱が必要」なのに、「成れても年収は一般的な仕事よりも低め」って、自分が将来何をしようか決めあぐねている若い方が見たら、絶対「パス」です。

 

 確かに、よく読めば「サイトに掲載中の求人条件」だけを集計しただけのものとありますし、下の方にスクロールしていけばフリーランスで活動されている方の報酬は反映されていないと書かれています。

 

 だったら、誤解を生むような書き方をしないで欲しいと申し上げたいです。僕は。

 

 

 

 

 フォトグラファーを収入だけで語るのは、かなり偏った物言いであることは間違いありません。でも、将来フォトグラファーになるかもしれない人の最初の一歩が、そこを入り口とする可能性は大いにあります。

 

 あくまでも僕の周りに限りますが、想定年収ウン千万円の方は大勢いらっしゃいます。撮影現場にこそ実用的な車で来られますが、家や事務所にはイタリアやドイツの超高級車をお持ちの方もたくさんいます。

 

 お洒落な方が住む街として有名な一等地の高級マンションに家族でお住まいの方も普通にいます。また、そういったことよりは、もっと自由な生き方やご自身のコダワリのために仕事で得た報酬を使われている方も大勢います。

 

 

 

 

 フォトグラファーの年収はピンキリであることは間違いありません。「写真家」は、他の「家」がつく職業と同様、生き方が問われる仕事なので、年収のみで語ることには僕自身抵抗があります。それでも、稼がれている方は、一般的な会社勤めの方の何倍も稼がれているというのが事実なのです。

 

 求人サイトには、「年収は一般的な仕事よりも低め」って書かれちゃうし、当のフォトグラファーはなりを潜めてブイブイ言わないようにしているし。

 

 お金が全てではないけれど、若い人たちにはユーチューバーばかりが夢のある仕事ではないってことをもっと知って頂きたい。そう心に強く思う今日この頃の僕なのです。