3年前の春。ゴールデンウィークの間の天気の良い日。それは突然やってきました。
僕がスタジオPARTⅡからチャリンコでPARTⅠへ向かっている時のこと。突然、横道から猛スピードで飛び出してきた自転車に衝突され、僕は目の激痛に襲われると同時に手足の自由を失いました。
人生ぴんち①:被害者の自分がいない中でも事故の現場検証は正確に行われるのか?
僕は、意識こそありましたが目は痛くて開けられないし、手はしびれるし、足は思うように動かないしで、そのまま救急車で病院に直行。幸い事故相手の方にケガはありませんでした。
ただ、この手の相手がいる事故では、後々双方の過失割合が問題になってきます。その後行われるであろう僕不在の警察の現場検証で、事実関係が正確に記録されるのか不安ではありました。
後日知ったその後の警察による現場検証は、事故の一部始終を見てくれていた人がいたかのように正確でした。
人生ぴんち②:何もできない自分が、どうゆう状態にあるのかもわからない恐怖
救急医が言うことには、手足が動かないのは脊髄が傷ついている可能性があるということで完全固定の絶対安静状態のまま入院となりました。幸い、その後時間の経過とともに手足の自由は戻りました。
ただ、右目の下の骨が割れ眼球が頬の後ろに落ち込んでいたため、後日骨の再建手術をすることになりました。すべてが人生初めての体験ばかりでした。
救急医の的確な判断と親切丁寧な説明、看護師の優しいケアはとても心強く安心して入院できました。
人生ぴんち③:目の下を切って、中の骨をいじくる手術。それをもう1度ってどーゆーこと!
一度目の手術の経過が思わしくなく、紹介された大学病院に行き、そこの先生が仰るところの「日本で一番腕のいい先生」を紹介されました。その先生の見立てにより、「最初の手術で目の下に入れた人工プレートを取り出し、その代わりに僕の腰の骨を一部切り取り、目の下に入るように削り差し込む」二度目の手術をすることになりました。
手術は無事終了、経過も良好。しかも、1回目も2回目も、手術跡がどこだかわからない。ついでに美容整形もしてもらえば良かったって後悔(笑)!
人生ぴんち④:相手の保険屋さんがいきなりすごんできた。しかも、まったく信用できない。
ある日、事故相手の保険会社から電話が掛かってきました。そこで開口一番言われたことが「○○保険の□□です。あなたが田辺さん? いいですか?事故でお金がたくさん取れるなんて考えてもムダですからね。わかってます?」
この手の事故では取れるだけ取ってやろうって考える被害者がいることは理解できます。だからっていきなりすごんでくるのもどうかと思います。僕は事故相手に直接電話をして、保険会社側の態度を改めて頂くようお願いしました。すると、先ほど僕にすごんできた保険会社の同じ担当者が、何ごともなかったようにまた電話してきたのです。
「○○保険の□□と申します。この度、田辺様におかれましては、大変なご不便をお掛けしておりますこと……」まるで手のひらを返したように声色もテンションも変えていましたが、名前も声も先ほどの担当者に間違いありません。僕はこんな信用のおけない人を相手に話し合いはできないと思い、知り合いのツテで僕の代理となってくれる人にそれ以降の事をお願いすることにしました。
その弁護士、世の中にはこんなに頭の切れる人がいるんだって感心するほどやり手の方でした。
結論。
失ったもの
右目の眼球の正常な動き。正面視以外は右目と左目の動きがズレてしまい、ものが二重に見えるようになってしまいました。
得たもの
事故処理を担当した警察官、何人もの医師や看護師、そして弁護士。そういったプロフェッショナルな方々の素晴らしさと有り難さを再認識。また、これらが正常に機能する日本という国に住めている幸せを実感。
そして、僕個人的には、何よりも普通に暮らしていけることがどれだけ幸せなことなのかを心から理解できたこと。それと、人生なんとかなるもんだってこと。
近いうちに、迷惑をかけた当時のスタッフや心配掛けたOB&OG、そしてもちろん現役のスタッフ、みんな集めてド派手に復活感謝祭を催すつもりです。「事故でお金がたくさん取れるなんて考えてもムダ」って僕に凄んできた保険屋さん、僕にびっくりするほどのお金を払ってくれるみたいなので。