時代は回る。ライティングも回る。

 

 先日、ビューティーの撮影で、ご担当の方がカメラマンさんにビジュアルイメージをこう要求していたそうです。「天使のリングって感じで。」

 

 「天使のリング」をご存知ですか? 天使の頭の上にある輪っかのように、髪の毛に周りの光が丸くハイライトとして写り込むことです。ネットで検索すれば、いかにきれいな髪を手に入れるかといった美容系の話が色々出てきます。

 

 ちなみに、僕にとっては懐かしい響きなのです。30年くらい前にスタジオマンだった頃、よく聞いた言葉でした。

 

 スタジオにいる者からすれば、「天使のリング」ってライティング効果のことです。モデルさんの真トップまたはちょっと後ろからメイン光より強めにライトを当てることにより、髪の毛にハイライトをつけるのです。

 

 

 当時のアイドル写真を見ると、皆さんしっかりとトップライトが入っていました。でも、その後、トップ光は古いって雰囲気が広まってきて、やがて誰も使わなくなってしまいました。

 

 それまでは日本人の黒髪を軽く見せる方法として、このライトが使われていたのかもしれません。その後、ヘアカラーが一般化し髪の色が明るくなっていく中で、「天使のリング」は聞かない言葉になっていったのです。

 

 で、久しぶりに「天使のリング」という言葉を聞いたわけです。最近は黒に近い髪色が復権してきた影響もあるのかもしれません。

 

 想えば、ライティングのトレンドは多灯からシンプルへと変わっていき、1発に行き着き、今はまた多灯に戻りつつあるようです。その流れの中でトップライトの「天使のリング」も復活する流れにあるのかもしれません。

 

 

 時代やファッションは繰り返すという話をどこかで聞いたことがあります。これまでは他人事ではありましたが。

 

 でも、半世紀以上生きていると自分自身でそのトレンドの一周を体現するものなのですね。我ながら、しみじみビックリです。

 

 ちなみに僕の黒髪は年々減少していく傾向にあります。昔前髪のあった場所にはトップライトを打たなくてもかなり強めのハイライトがパキーンと入るようになりました。

 

 今風に言えば「リア天」、リアル天使のリング。時代やファッションのように、大きなトレンドの中で髪の毛もまた生えてきたらと、切に願う今日この頃の僕なのです。