タバコにまつわる思い出

 

 僕がタバコをやめて20年以上経ちました。1箱150円の頃に吸い始め、220円までの十数年、1日2箱吸うかなり煙たいおっさんでした。

 

 

灰皿

 

 高1の頃、中間や期末の試験勉強と称しては実家の僕の部屋に友達を呼んで、窓から顔を出してはタバコを吸っていました。そのうち、となりの部屋の当時小学生に上がったばかりの妹がそれに気づき、親にバレてしまいました。

 

 お袋にはガミガミ怒られましたが、オヤジは笑いながら「火事に気をつけろ」と言うだけ。その代わり、それ以降友だちが来るたびに、オヤジの差し向けで妹が僕の部屋に灰皿を持ってくるようになりました。

 

 バレバレな状態もあり、幼い妹の手前もあり、とても吸う気にはなれませんでした。吸いましたけど。

 

 

 

口さみしい

 

 20代の頃、当時勤めていた会社の人たち数人で飲みに行き、2、3件目にカラオケスナックに流れ、かなり酔った状況でした。僕の吸っていたタバコが切れてしまったのですが、同僚たちにはさまれる形でソファに深く腰掛けていたので、動くのはかったるいし、頭はボーっとしているし。

 

 僕は酔って狭まった視野の中で、僕の口さみしさを紛らわしてくれそうなものを探しました。で、僕は見つけたそれを自分のほうに引き寄せタバコの代わりに吸いました。

 

 それは、となりに座っていた同僚の唇でした。

 

 吸い終わった後に「ヤバい」ことに気付いたのですが、その時は相手もかなり酔っていたようだったので、なんかあったような気もするけど、何もなかったような気もすることにしました。きっと、何もなかったのだと思います。

 

 

禁煙

 

 当時、勝手に好きな女の子ができました。たまに会う程度のただの知り合いの関係だったので、今後どう距離を近づけデートに誘える距離にまで持っていくかが課題でした。

 

 だから、たまに会えた時は会話の中でさりげなく好きなものや嫌いなものを聞くようにしていました。そしたら、彼女はタバコの臭いが大嫌いだということがわかったのです。

 

 これでは仮にデートまでこぎ着けたとしてもキスができません。僕はその日を境にタバコを止めました。

 

 タバコを止めてからわかったことですが、喫煙者には何も言わないけれどタバコを吸う人のソバには居たくないと思っている人って結構います。僕はタバコを完全に絶って、人間関係が広がりました。その子との関係は広がりませんでしたが。

 

 

 

タクシー

 

 僕がタバコをやめてしばらく経ったあとのことです。まだ、都内のタクシーが全面禁煙になる前のことでした。

 

 僕を喫煙者だと勘違いしたタクシーの運転手さんがこっそり教えてくれたことです。「……以前は自分でも吸っていたのに、タバコをヤメたって人は底意地悪いんですよ~。あの人たち、タバコの臭いを目の敵にしてますからね~。」だそうです。

 

 

 

 タバコ吸うスタッフ、気をつけてね。