オレオレGメン

 

 外苑特別捜査班。人はそれをGメンと呼ぶ。これはノンフィクションである。

 

 

 って、本当は振り込め詐欺とかの組織犯罪として逮捕者が出てから「実は~」って書こうと思っていたのですが、しばらくはそうなりそうもないので先に書いちゃうことにしました。

 

 

事の発端、不法投棄

 5月のGW明け、スタジオのゴミ置き場に見慣れないゴミが置いてあるのをGメンのスタッフが発見。中身は額縁やらフライパン、包丁などの燃えないゴミから、普通のコンビニ弁当的生ごみやら何やら45リットルゴミ袋5袋分の大量ゴミ。「誰だ~、こんなの捨てていったのはー!」ということで、住所や名前が特定できるものがないかGメンスタッフみんなでゴミをあさる。

 

 

さながら推理小説

 しかし、敵もさるもの。誰か特定できそうなものは何も無し。ただ、フランス語を勉強している書きかけの大学ノートや、姿見の裏に書かれた女の子の落書きなど、大学生くらいの男女何人かが出入りしている場所であることは想像できた。そんな中、Gメンスタッフの執念の捜査により文庫本のカバーの裏紙に殴り書きのメモを発見。「〇〇コーポ213号室(仮名)のカギです。」私はそのメモを頼りに、歩いて7、8分の〇〇コーポに向かった。

 

 

地道な聞き込み

 そこは、築年数こそ経っていそうだが、きれいに管理されたマンションだった。私が〇〇コーポの管理人さんに事情を伝えると、彼女は真摯に答えてくれた。「213号室にお住まいの方はいますよ。ご夫婦でね。もう住んで2年くらいになるかしら。でも、とても真面目な方だから、そんなことするとは思えないですけどね~。」それ以上はらちが明きそうもないので、私は管理人さんに外苑特別捜査班の連絡先を伝え、その場を離れた。

 

 

防犯カメラに映る男

 スタジオに戻ると、GW中の防犯カメラの映像を流し見ていた眼光鋭いGメンスタッフが怪しい人物を発見。連休中の5月4日、一人の若い男性が何度かに分けてゴミを持ってくる姿を確認。ラフな格好の片腕に派手なタットゥーが入った人物だ。ただ、何回かに分けて捨てに来る姿が3分~4分おきに現れては消えていく。〇〇コーポまでは片道7、8分かかるので、そこを往復したとは考えにくい。いよいよ手掛かりはなくなったかに思えた。

 

 

ハンコのなぞ

 そのうち、鑑識Gメンにより置いて行かれたゴミの中に大量のハンコが入っていることが判明。色々な人の苗字が30本以上。これは何に使われていたものなのか? 若い男性のド派手な腕のタットゥ―からして普通の企業とは思えない。早くも事件は迷宮入り。ゴミはお蔵入りだ。

 

 

つながる点と点

 それでも、何か少しでも手掛かりの欲しかったGメンスタッフは、防犯カメラに映った男性を紙に出力し、〇〇コーポの管理人さんを再度訪ねた。「この人かどうかはわからないですけど、213号室に2,3年前まで住んでいた人がいて、その人の部屋はこんな感じの若い人たちが大勢出入りしていて、ちょっと問題になっていたんですよ。今はこの先にあるメゾン〇〇〇(仮名)に居るのを何度かお見かけしたから、そこに住んでいるんじゃないかしら。」調べるとメゾン〇〇〇は、スタジオから徒歩で片道1、2分。往復3、4分。メモのナゾも、数回に分けて捨てに来た男性の時間も、すべてがつながった瞬間だった。

 

 

〇〇警察生活安全課

 ゴミを捨てていった人物の居場所は判明した。ただ、大量のハンコ、堅気ではない可能性、防犯カメラのお兄さんキレたら怖そう、という理由から我々Gメンは警察に相談に行くことにした。受付で「ご用件は?」と聞かれたので「不法投棄の相談です」と答えると生活安全課に通され、そこの刑事に事情を説明。「DVDとUSBメモリをお渡ししますので映像をこちらに保存してもらえますか。今日、明日はちょっと別件が忙しくて行けませんが、ゴミを調べたいのでそれまで取っておいてもらってもよろしいですか。」

 

 私は「わかりました。」と答え、警察署を後にした。警察業界の常識は知らないが、我々の業界で「忙しいから今日・明日は行けない」ということは「行く気がない」ってことなんだが、まあそれは置いておく。それでも、警察が乗り出したってことは、やはり振り込め詐欺などの組織犯罪の疑いがあるからだろう、などと考えること3週間、未だに警察は来てねえし。

 

 しかも最初の1週間は毎朝電話が掛かってきて「すみません。今日も忙しくて行けません。」と言ってきたが、ここ2週間はまるで音沙汰無し。生ごみは腐って臭うし、いい加減ゴミが邪魔だし、ブログのネタは無いし。と、それは関係ないし。

 

 

裏事情通

 そこで、私は知り合いの警察関係に詳しい人物になぜすぐに来ないのか、その辺の事情を聞いてみることにした。

 

 「警察も、色々と忙しいですから、緊急性を伴う事件などはすぐに対応しますが、今回のように怪しいというだけだとすぐには動かないですね。ただ、そういった情報の積み重ねは大切なので、このまま来ないってことはないと思いますよ。警察としても地域のデータとして、ここの場所に組織的な犯罪を疑わせる者が出入りしているとかの情報を常に更新しておくことは大切ですから。」

 

 

ブラインドタッチ

 我々も警察に届けた以上、不法投棄の相手に大量のゴミを突き返すわけにはいかない。といって頼みの警察は来てくれない。額縁や姿見は大きいから一般ゴミでは持っていってもらえなさそうだ。これでは八方塞がり。こうなったら、ブログに書いてやる!

 

 そうやって私はPCのキーボードを両手の人差し指でたたきだしたのであった。

 

 

 外苑特別捜査班。人はそれをGメンと呼ぶ。これはノンフィクションである。

 

 

 

 

 

(追記:2018年6月6日 不法投棄から1ヵ月。刑事さんが上司の方と一緒に来られ、ゴミ全部回収していかれました。)