幽霊よりも怖いもの

 

四谷怪談【よつや-かいだん】元禄時代に起きたとされる事件を基に創作された日本の怪談。基本的なストーリーは「貞女・岩が夫・伊右衛門に惨殺され、幽霊となって復讐を果たす」というもの。怪談の定番とされ、折に触れて舞台化・映画化されているため、さまざまなバリエーションが存在する。(ウィキペディア「四谷怪談」より)

 

 

 「怪談なんかどうですか?」

 

 二人いるSくんのうち、この秋から彼女が遠くへ行ってしまうほうのSくんに「ブログのネタ、何かない?」って聞いたら、そう提案されました。どうやら、以前書いた記事(「どうでもいい話」)が頭にあってのことのようです。

 

 正直言って、僕に怪談的なネタの持ち合わせなどありません。恨みとか、呪いとか、取り憑くとか、まったく興味がありませんし。そもそも、世の中にある「スピリチュアル」な話のほとんどが「単なるビジネス」だと思っています。

 

 それでも、どうしても身震いするような話をと言うのなら、こんなのはいかがでしょう。

 

 

 

 まだ東京が、江戸と呼ばれていた頃、現在僕のいるスタジオ(PART1)から数十メートルほどのところにお岩さんという女性が住んでいたそうです。後に「東海道四谷怪談」として有名になった幽霊「お岩さん」のモデルとなった方です。

 

 現在、彼女の家があった場所付近には、そのお岩さんを祀ったとされる神社とお寺があります。元々は神社だけだったそうですが、お岩さん没後200年が経った明治の頃、火災により社殿を消失。事情により神社は中央区に移転することとなりました。それから元の現在の地に神社が再建されるのは昭和27年、70年以上も先のこととなってしまいます。

 

 その結果、江戸の頃からの集客力ある観光スポットだった「お岩稲荷」を失い、困り果てていた地元の方々は、焼失した神社の跡地近くに小さなほこらを祀りました。そのうち、そこに新しい「お岩稲荷」を作ることで地元経済を再び盛り立てようという話が湧き、やがて今のお寺が建つに至ります。

 

 

 今では、神社もお寺もどちらも「お岩稲荷」ののぼりを立て、お互い元祖だか本家だかを主張し合っているそうです。狐なのに、犬猿の仲ってちょっと笑えますけど。

 

 お岩さんも真っ青の観光スポット復興話。お岩さんの幽霊話より僕はこちらのほうが百倍怖いです。

 

 ちなみにお寺の方は、ご利益スペックに「男女の仲もつ縁結び」を謳っています。この秋から寂しい思いと向き合わなければならないSくんにおススメのお岩さんです。