カメラマンのアシスタントさんから聞いた話です。撮影で、ある白ホリのスタジオに行った時のこと。その日スタジオを担当してくれたスタジオマンの方と話している中、話題はカメラマンアシスタントのことになったそうです。そこで、アシスタントさんが「スタジオ出たら、だれかにつくとか考えているの?」と話をふると、返ってきた答えは、
「アシスタントすか。 それって、今どき古くないっすか?」
アシスタントさんが呆れながらも、笑い話として教えてくれたネタです。そもそもアシスタントやっている方に向かって「古くないっすか?」って「頭のネジゆるくないっすか」って話です。
でも、そう考える人って今どき珍しくないと聞きます。今の時代は、わざわざアシスタントなんかやらなくても、カメラマンになれると考える方が増えているそうです。まだ酸いも甘いもわからない学生さんならまだしも、撮影スタジオに勤める方にまで侵食しているアイデアというのですから正直驚きます。
別にね、アシスタントを経ずカメラマンになる方は昔から一定数います。今になって増えたと思っている若い方がいるようですが、決してそういうわけではありません。
では、なぜそのように思い込んでしまうのかといえば、インスタなどのSNSの影響であることは間違いありません。ごく一握りのアシスタント経験を必要としない才能の持ち主と、それ風を装いSNSをにぎわすたくさんの方により、そのような幻覚が出来ているのでしょう。
もっとも、インスタなどのSNSが、フォトグラファーの営業のスタイルを変えたことは確かです。今は、僕のいる外苑スタジオのスタッフでも、インスタ経由で撮影依頼の仕事がくる時代です。
その意味で、インスタとかのSNSって、自分の作品を不特定多数の人々に広めるためのツールとして、とても画期的なことは確かです。でも、それは、あくまでも多くの人に見てもらうための手段という意味においてです。
インスタやSNSを駆使したところで、その作家の作品のクオリティーや、仕事への信頼性が上がるということにはなりません。もっと言えば、インスタが足りない才能を補完してくれるわけではない以上、才能の補填やその開花方法を得るには何かしらの手立てを講じる必要があるのです。
それが自分でできるならそれでいいし、よくわからないなら師匠や他の力を借りればいいというだけのことなのです。
冒頭のスタジオマンの方。僕はその方を存じ上げませんが、新しいとか古いとか言っているうちはその辺のところが見えていないってことです。自分一人で出来るタイプではありません。
それでも、(きっと)若いんだから、自分を信じてその路線で突っ走っていくべきです。そこで初めて自分がどれだけ非力なのかを思い知り、地に足をつけた自分に目覚め、再スタートを切って大きく成功した人を僕は何人も知っています。
今も、昔も。