さよならキャラバン

 

 15年間お疲れ様でした。

 

 彼、キャラバンがスタジオの機材車として納車されてきたのは、平成17年の夏。その彼が先週、四谷三丁目の交差点を通過中に止まり、そのまま息を吹き返すことなく廃車となった。

 

 この間、彼のハンドルを握ったスタッフは100名ほど。

 

 大きな事故こそなかったけど、こすりキズや凹みキズは数知れず。すべては彼が身を挺して、スタッフに運転技術の未熟さを教えた名誉の勲章。それにしても、スタジオの車ですって言うのが恥ずかしいほどボロボロだったけど。

 

 

 以前、埼玉県警の刑事さんがスタジオに来たときはマジで焦ったものだ。その数日前の夜、埼玉のどこかの街で道の両側に止めてある車数台にぶつかりながら逃走した車を追っているという。

 

 現場の目撃証言から、警視庁のデータベースで白の2253のワンボックスを検索したら数十台がヒットして、それを1台1台確認して回っているとのこと。刑事さんは「数台の車にぶつかって逃げてますからね、ボロボロですよ。見ればすぐわかります。」と笑いながら言う。だから、すぐ終わるからちょっと見せて欲しいと。

 

 刑事さんは興味深げにボロボロの彼を見て、あちこち写真を撮って帰っていった。もちろん、その後連絡はなかったけれど、あの時はあらぬ疑いをかけられまいかとヒヤヒヤした。

 

 

 この15年の間に出たOBやOGの中には、フォトグラファーとして高級外国車を乗り回す人も大勢いる。でも、その車をキレイなまま乗れているのは、きっと彼との練習の日々のお陰。

 

 今いるスタッフだって、この先はカメラマンのアシスタントとなって師匠の高級車を運転するかもしれない。だから、運転はスタジオスタッフでいるうちに慣れておいた方がいいにきまってるのだ。

 

 さよならキャラバン。今までどうもありがとう。